今回は、Leaders HSのIntensives Week(校外学習)の一環として行われた「日本伝統楽器」の体験会についてご紹介します。木曜日に行われたこのイベントでは、日本の伝統的な楽器である琴や尺八、三味線の演奏と体験が行われました。ゲストとして、3名の演奏者が登壇してくださいました。
ゲスト紹介
石榑 雅代先生(ウェブサイト)
1992年からアメリカで琴や三味線の演奏と指導を通じて、日本文化の紹介に尽力されています。その功績から、ニューヨーク領事館より在外公館長表彰を受賞し、2007年にはNewsweek紙の「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれました。石榑先生は「MIYABI」琴三味線アンサンブルの主催者でもあり、世界各国で演奏活動を行っています。
Travis Shaverさん
MIYABI琴三味線アンサンブルのメンバーであり、音楽家、音楽教育者、民族音楽学者でもあります。過去8年間にわたり日本とアメリカで尺八を学び、都山流と琴古流の両方で資格を取得しています。
長谷川 優さん
NY de VolunteerスタッフかつMIYABI琴三味線アンサンブルのメンバーで、シニアサイエンティストとして女性と妊娠に関する生物医学研究に携わっています。8歳から琴と三味線を習い始め、2023年より石榑先生に師事しています。
さて、1曲目は石榑先生(琴)とTravisさん(尺八)による「春の海」の合奏で、日本人にとって正月の音楽として馴染み深い曲を、美しく奏でて頂きました!
2曲目の長谷川さんによる「さくら」(琴独奏)は、日本音楽の代表的な「さくら〜さくら〜」のフレーズを多様にアレンジした曲でした。演奏後、ご自身の経歴や、お琴の歴史も紹介してくれました。ある身体的な特徴を持った人のみに琴・三味線の演奏や指導が許された「当道座制度」について説明がされていた際、このような人々はどんな人かという質問に対して(答:目の不自由な方々)、一人の学生が「Japanese people」と答えてくれ、会場に笑いが。確かに間違ってない、けど、そういうことじゃない。
(実際にお琴を生徒に持ってもらい、その重さや長さを知ってもらいました)
3曲目はTravisさんによる「滝落の曲」(尺八独奏)で、尺八一つで滝として水が落ちる様を、テンポ、スピード、音量など、音の表情を巧みに変えて演奏してくれました。続いて尺八が中国から日本に渡り、穴の数が減るなどの進化を経て、今の尺八の形になった歴史や、Travisさんと尺八の出会い、今のお仕事のお話もして下さいました。
4曲目は、石榑先生による「雪乱舞」(三味線独奏)。三味線は数分弾くだけですぐに調弦が狂うため、弾きながら調弦をし続ける、とても難しい楽器です。また、琴や三味線は歌いながら弾くこともありますが、日本語話者であっても歌の歌詞を聞き取るのは難しいものです。石榑先生は、歌の歌詞をあえて英語に変えて、その雰囲気を生徒さんたちに感じてもらいました。初めは私たちもなんと歌っているか分かりませんでしたが、ヒントをもらった後聞いた「すぅ〜ぷ〜〜り〜ん〜〜〜ぐぅ〜〜〜」に、Springだ!と分かった瞬間は楽しかったです。
最後は、映画「鬼滅の刃 無限列車編」主題歌「炎」を琴の二重奏にアレンジした曲を、石榑先生と長谷川さんが演奏してくれました。生徒たちの中には鬼滅の刃のファンもおり、演奏後のアンコールの声が出るほど、喜んでもらえました。
お昼ご飯は、BrooklynのWasanでオーナーシェフを務める櫻井覚三郎氏がご用意くださいました!お寿司、焼きそば、餃子、鶏のから揚げなど、アメリカの高校生に人気のあるメニューがビュッフェ形式で振る舞われました。
お弁当を食べながら生徒たちと交流していた際、セラピストになりたいという夢を語ってくれた子がいました。演奏者が自身の経歴を話してくれたのは、将来の選択肢や視野が少し広がる良い機会になったのかもしれません。
午後は学生たちを3組に分け、15分ごとに3つの楽器をローテーションで体験しました!
尺八は音を出すのが難しく、多くの生徒が挑戦しましたが、音を出すことができたのは一部の楽器経験者のみでした。何度チャレンジしても音が出せず、時間切れになって悔しそうにしている生徒も多かったです。Travisさんが「首振り3年、ころ8年」というフレーズも紹介してくれていたように、尺八の音を出すことだけでも難しいですが、首を振って音の加減ができるようになるのに3年かかり、さらに細かい指の動きによって「ころころ」というよい音が出るようになるに8年かかるという、とても難しい楽器であることを実感してもらえたようです。そして尺八の楽譜は暗号の様でした…日本人でも読めない・意味がわからない!
三味線は、撥(ばち)を持っているだけで手首が攣るように疲れる、弦を抑えるのが難しすぎる…と、とても難しかったようです。ですが、日本人でも実際に弾く機会があまりなく、ましてアメリカでは見ることも珍しい楽器ですから、珍しい楽器を体験できて嬉しそうでした。
お琴の楽譜は、13本の弦を表すのに漢数字で一から十までと、11本目からは斗(と)、為(い)、巾(きん)と漢字で書かれています。体験会では生徒たちに、アラビア数字に書き直したきらきら星を弾いてもらいました。初めは、弦を一番下の一から何度も数え直さないと正しい弦が見つけられませんが、他の楽器と違い、正しい弦を弾くだけで正しい音が出るため、曲を弾き終えられた達成感もあってか、生徒たちのお気に入りの楽器となりました。
演奏後に手を叩いて喜んでいる姿に、こちらも嬉しくなりました。
今回のイベントは多くの生徒にとって初めての経験となり、その音の優しさや演奏の難しさに触れる貴重な機会となりました。生徒たちの笑顔や熱心に質問をしてくれる様子が印象的で、日本文化に対する興味や理解が深まったことを感じる一日でした。
これまで何度もご参加頂いているボランティアさんに、今回もご協力頂きました。いつもどうもありがとうございます!
Intensive Weekも残りあと1日。最終日は書道です!!